生きる-alive-
生きる-live- 2018
F25 65㎝×80㎝
「生」の文字を象形文字や様々な書体で書き重ねている。
書道では、墨の濃淡などで文字に立体感を出すが、
文字を立体物として画面上に存在させようと試みた。
書道における筆の上下運動や緩急といった
「文字を書く」という動作によってできた凹凸は、
「描く」という動作によってできた凹凸とは
異なるものになるのではないかと考える。
楽しい「生」を書く時は、筆も軽やかに踊るように動き、
苦しい「生」を書く時は、食い込むような線になる。
人生は楽しいことばかりではない。
辛いこと、苦しいこともありのまま「生」の文字で書き重ねていき、
「生きる」を表現している。
書道は、「読めない」ことにより鑑賞者が難しさを感じてしまうことが多い。
そこで文字を重ねて書くことで、あえて読めないようし、
「文字を読む」ということに囚われず、
鑑賞者自身が自由に作品と向き合うことができるようにした。
この「生きる」シリーズは、
祖父との別れがきっかけで作り始めたものである。
祖父と過ごした日々を全て忘れたくないと思い、
ひたすらキャンバスに「生」と書き続けた。
書くことが自分にとって生きる希望であると強く感じた。
自分が生きるために書き始めたものだが、
自分と同じように辛い思いをしている人に
寄り添えるような作品を作っていきたい。
「生きる」とは何か、また自身の「生」について
考えるきっかけとなってくれたらと思う。